11/25(日)出町座でのスペシャトークのメモ&覚え書き その2

・監督「『トリップ・トラップ・マップ』はアニメーションの根源的な”動くことのよろこび”に溢れている。『rain town』は世界観の表現を優先したのでどうしても動きの要素が犠牲になる。そこはかなわないところだ」

 

・上田氏「監督によって脚本の分量は変わる。石田監督は間合いが長いので脚本の分量は少ない。湯浅政明監督だと30分のつもりで渡した脚本が15分で消化されてもう一本分要求されるのでしんどい(場内笑い)」

 

・上田氏「エウレカは・・・アレ実はよくわからないよね。雰囲気で流されてわかった気にさせられるけど、実はよくわからない(笑)」

監督「そこをアニメの力技というんでしょうか・・・そこまでのシーンの流れやアオヤマ君の表情、あと音楽の力も借りて、カメラも足元からじっくりパンアップさせたりでそれっぽく、なんとか(笑)」

 

・わからないものはわからないままで残す。「わからなさ」を大事にした。

 

・上田氏「実写の場合は役者と脚本のせめぎあいというのがあって。役者が立派すぎると脚本がジャマになる。脚本はシンプルにしておいて演技合戦してもらおう、ということになる。アニメはどうだろう?」

 

このあたりからは初期段階の絵コンテをスクリーンに投影しながら話が進められる。

ファンにはおなじみのイメージがこの段階でかなり完成しているのが見てとれる。

・上田氏「ね?こういうのが最初から出来上がっちゃってるんだから、脚本家のする仕事なんて無かったよ?」

監督「いやこれはハイライトというかサワリのイメージだけなので全然不完全です」

 

・上田氏「ある程度煮詰めたあとは、脚本を監督に渡してあとはお任せ、という流れだったね」

監督「実際に映画をみていただいてどうでした?」

上田氏「素晴らしかった!・・・でもひとつだけクソ・・・(場内爆笑)いやいや心残りがひとつだけ。夏休みでトランプが飛んでいって川に流れるカットがあるでしょう。あれは円環の川になるんだからうまく使えなかったかなあ、と」

監督「最後のほうで川にひっかかってるトランプのカットはありましたけれど、円環を表現するためのもっとうまいやり方があったかもしれません」

 

・村山、間崎両氏「夏休みのプールシーンは削ろうという話はでていたのだけれど、監督がガンとして譲らなかった。シナリオ上どうしても必要なシーンだとは思われなかったのに」

監督「あれは理屈じゃなくて、どういうんだろう・・・(言葉を探す監督)映画を作るうえで情動に従うべき瞬間、というのがあるんです」

 

・上田氏「ノートがずいぶんたくさん出てくるけれど、大変よね。手がスライドするだけじゃなくてちゃんとアニメーションしている」

監督「文字を書く手のアニメーションは大変です。村山君に任せました。細かい動きを何パターンも見事にやってくれました」

 

・監督「(ペンギンパレードの初期イメージを示しながら)原作では一頁たらずのシーンです。ペンギンは走ったりしませんし、二人を乗っけたりもしません。それがああいうダイナミックなシーンになったのは上田さんが打ち合わせで”ペンギンパレード”と名付けてくれたおかげです。そこからイメージが広がりました」

上田氏「あれ?そうだったかな?」

 

・上田氏「 ” 海 ” の中もいろいろヘンテコになってるけど、コーラの自販機が特にいいね。非日常的でふしぎな空間に日常的なアイテムがポツンと入ってるのが」

監督「基本的に青い世界なので、赤い色が絵的に映えると思いました」

 

・監督「海が崩壊する直前、ペンギンたちがブルッとふるえて伸び上がるところも村山くんが頑張って描いてくれました。CGのコピペじゃありません。数百匹はいたよね?」

村山氏、うなずく

 

・上田氏「全体としてきっちりとドラマを作ってくるんだけど、ラスト20分で暴走するんだよね。湯浅監督もそうだし、石田監督も(場内笑)」

 

・監督「長編アニメともなると長い期間アニメーターたちに仕事をしてもらうための強い動機付けが必要になってきますし、同様に強いプレッシャーもかかります。そのあたりのコントロールも今回はうまくいったのかな、と」

 

・ペンギンパレードでは家が空にあったりいろいろ常識はずれな状態になってるので、背景スタッフとのやりとりには苦労をした。通常一枚で済む背景に50枚重ねて使うところもあった。

 

・村山、間崎両氏「監督が自主制作出身なので個人でひととおりのプロセスを経験している。スケジュール全体のカロリーコントロール(力の配分)にもその経験が生きたのではないか」

監督「第1パート(序盤)ではペンギンも少ないのでアニメーターもじっくり作品に慣れていく期間だった。ここだけで2、3ヶ月かけた。作品に慣れてきた終盤の第7パートでは半月で終わらせた」

 

このあたりで予定を10分オーバーしており、スタッフから終了宣言が出る。

場内の拍手に送られて、4氏退場。

 

 

(2018.11.29. 村山氏のペンギンと世界の果ての自販機の話を追加)