『雨を告げる漂流団地』つれづれ

 バランスが取れてるな、と思った。

 『ペンギン・ハイウェイ』についてアニメスタイルでのインタビューで石田祐康監督が答えていわく、「真面目いっぽんやりのアオヤマ君だけど、そのままではみていて窮屈なのでたまに顔を崩してます。意識的に、大胆に」(大意) もちろんやりすぎるとアオヤマ君のキャラが壊れてしまうのでバランスが重要なのだけれど。そのバランス感覚が絶妙で、同じことが『雨を告げる漂流団地』にもいえると思った。

 ただし今は表情の話ではない。クライマックスでイカダに残された5人がそれぞれの家族の幻影を見る場面だ。強い逆光でそれぞれのシルエットとおぼろげな顔の雰囲気が察せられるぐらいで、細かいとこまでは判別できない家族の姿。観客にとって、ここでそれぞれの家族の個々のキャラクタについての情報は不必要だ。「いきなりそんなこと言われても、ねえ」だ。少年少女たちにとってかけがえの無い家族が待っている、そのことだけが伝わればいい。 だから初登場の彼らはおぼろげにシルエットが浮かぶだけなのだ。 航祐と夏芽の母親はすでに登場ずみなのではっきり見せている。 バランスというか単にストーリーテリングのイロハみたいな話かもしれない。